『遺品整理』~父の遺品を整理した時~

父が亡くなった時、お通夜、お葬式、初七日、49日、本当に何が何だかわからないままあっという間に過ぎてしまったように思います。
遺品を少しずつ片づけ始めたのは、49日の納骨を終え、暫く経ってからです。
実際の所、「父が亡くなった」という実感が無かったのです。片づけてしまったら、本当に父が亡くなってしまったことが現実になってしまうようで、なかなか手がつけられませんでした。
私は、遺品整理というよりは、形見分けの品を整理するために始めたように思います。

まず、父のお洋服の整理をしました。ワイシャツは全てクリーニング済みでしたが、背広が数十着あり、クリーニングしてないものはクリーニングに出し、普段着とよそ行きの背広に分けました。ネクタイも100本近くあり、新しいものと古いものに分けました。ワイシャツも背広も全てテイラーで作ったものだったので、名前入りというのが形見分けには少し難だったのですが、上等の生地で作られたものばかりだったので、若い時に作ったものも、品が良く、まだ着られる状態にありました。
背広とワイシャツは、母が気に行ったものだけを残し、父の義弟や私の主人や甥達にもらってもらいました。背広の装飾品は母が特に父への思いが深いものを残し、主に私の婿へ。テイラーで作った父の体型に私の主人が嘘のようにピッタリだったのです。まるで、父がプレゼントしたかのようによく似合っていました。父のお気に入りの着物ももらいました。
書斎はそのまま、机の中も全てキレイに整理整頓され、お財布や名刺入れや万年筆等、思い出になるものだけ形見分けに私と妹で分けました。
学者だった父が書きかけの原稿は、手書きのものは、ファイリングして、フロッピーのものはシールで原稿名がわかるようにして、ケースに入れて書棚にしまいました。
原稿や父のフルネーム印の押された書籍は父の知人や、仕事関係の後輩や部下の方々に見に来て戴いて欲しいものを持って帰って戴きました。
こうして様々ものを形見分けし、残りを整理整頓した後、最後に残ったのは日記です。

20歳から亡くなる65歳亡くなる5日前まで毎日付け続けた父の1年日記20冊と10年日記3冊があるのです。毎日、短い時は数行から長い時は十数行の日記を父は残していたのです。
私と妹はその内容を知りません。母と出会う前からの日記だそうです。今では母だけの宝物となっています。母は見せてくれないのです。しかし、「お父さんと結婚して良かったぁ~」とニッコリ笑っていつも母は言います。
思ってもみなかった愛の言葉とかが記されていたのでしょうか。母にとって「愛されてたんだなぁ~」と実感できる涙の止まらない日記だったようです。
父の遺影となった写真は、亡くなる数ヶ月前に、父が母と一緒に、何となく写真館を経営している教え子に何となく勧められるままに、普段着のまま夫婦一緒に仲良く撮ってもらった写真を使いました。父の顔が何とも言えないあまりにも良い表情をしていたので、母のお気に入りだったのです。それを聞いた葬儀社の方がその写真をトリミングして作って下さったのです。本当に穏やかな良い顔をしています。見ていると今にも話しかけてくれそうな感じがするほど良い遺影となりました。
我が家の遺品整理はこんな感じで終わりました。父の書斎はそのままに、まるで長期出張中であるかのように、また、一部趣味の展示室のようにもなっていています。
生前戴いた勲章もトロフィーもタテも賞状もキレイに飾っています。

ソファーの横に、樫の木の大きな碁盤があって、黒白の碁石セットがドカッとのっかっています。机の端には中国の人間国宝と言われている名高い方の掘った硯に墨・筆の入った漆の硯箱。これは祖父の形見だそうです。部屋の片隅には剣道の防具が一式。壁には樫の木の単刀・長刀が飾ってあり、祖父の蔵からもらってきた鹿の大きな角。
趣味の一眼レフカメラは書棚の中央に鎮座していて、横には父がレイアウトした写真を張ったたくさんのアルバム。そして書棚の横には写真の脚立が立てかけてあります。母は、全て押し入れにしまわず飾りました。父の趣味の品展示場が書斎の一角にできあがりました。

これを遺品整理と言ってよいかはわかりませんが、母はこれらを捨て去ることができないようです。綺麗に片付いた父の書斎を時々お掃除しながら、何か父に語りかけているようです。
父の遺品は、生前の父の生活をそのまま想像させます。聞こえる人には感じるのです。大切な人に伝えたかった何かを遺品は語りかけてくれるのだと私は思います。
遺品整理とは、亡くなった人だけでなく、残された人の思いもそのまま表れるようです。

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2016年3月2日 | コメント/トラックバック(0)|

カテゴリー:遺品整理

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